No.157_News Topic:栃木のNEWS

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~栃木同友会情勢学習会~

歴史と理念に学び未来を切り拓く!

吉田敬一氏の写真

吉田敬一氏

5月29日(月)小山市市民交流センター「ゆめまち」およびサテライト会場2か所(宇都宮市・鹿沼市)とオンライン形式で県南支部主催の情勢学習会が行われ、34名が参加した。講師には駒沢大学名誉教授の吉田敬一氏をお迎えし「歴史と理念に学び未来を切り拓く!」というテーマで、情勢分析とコロナ禍後の経営戦略についてお話し頂いた。

トリクルダウンの構造はすでに崩れている

まずは情勢分析から。日本企業の強みや特徴は基幹産業である重科学工業(自動車、家電等)での「カンバン方式1」による高品質体制と、親会社と子・孫会社のピラミッド型の産業構造によりお金が行き渡るトリクルダウンの構造にあった。しかしグローバリゼーションにより大企業は海外に製造拠点を移し、国内産業は空洞化しこの構造が崩れた。

世界規模での地産地消が進み「made in Japan」から「made by Japanへ」へと変化したため、日本企業の製品が売れる事と日本経済が潤う事は連動しなくなった。

さらに、為替のトリックや株主の大半が外国資本に変化した事もあり、日本企業の株価の上昇と実態経済の回復は連動してない。

株主への利益配当が最優先される株式会社の仕組みと、外国資本化により利益配当金が国外に流出する構造的な問題があるためだ。

中小企業を取り巻く経営環境の悪化

国は長期にわたり円安政策に固執したが、上述の構造変化により国内経済は一向によくなっていない。

そして実質的外資企業である大企業を優先する一方で、国内経済の真の担い手である中小企業を軽視する政策がとられている。

さらに、中国との経済的な結びつきが深い一方で、政治的には米国との関係性が強く、米中対立問題の難しさも語られた。

中小企業をとりまく経営環境はかつてない程の厳しさを増し続けている。

中小企業の生きる道

つづいて中小企業がとるべき経営戦略についての話がされた。

利益追求は大企業がやることであり、中小企業は社会的使命を全うすることが重要だとされた。

「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉が引用され、道徳感をもちながら利益を追求する「良き経営者」である事の重要性が強調された。

印象的だったのは3代目経営者(≒後継経営者)の使命感の稀薄さについて触れられた点だ。後継経営者が自らの使命感と会社の社会的使命を調和させる事の難しさが指摘された。

これは後継経営者たる私が常に感じていた問題であると同時に、構成人員として後継経営者が多数をしめる栃木同友会においてより真剣に取り組むべき課題であると感じた。

さらに、時代の変化にあわせた事業形態の変化についても言及された。吉田先生が提唱する「徹本業2」、「拡本業3」、「脱本業4」による事例についても話されたが、業態変化をとげた先達企業はみな、基本となる「徹本業」が実践できているとの事だった。まずは現業を徹底的に極める姿勢こそが活路を見出すと感じた。

そして「温故知新」についての話があった。「本業に囚われずされど本業を離れず」。事業の表面的・物理的なところに縛られず本質である「機能」に着目して事業ドメイン(領域)を考える事で生き残るべき道が見えると語られた。その他紙面の関係で全てを取り上げられないが、同友会の目指す良き会社、良き経営者について深掘りする事で今後の経営戦略を見出す事ができるはずとのお話しだった。

今回の講義から有益で多様な経営の切り口をご教示頂く事ができた。これを糧とし会員の皆様が最上の経営判断をされる事を祈りながらこの記事を締めたい。

  • 1】カンバン方式:必要なモノを必要な量だけ調達する方式。予備在庫を良しとしない特徴がある。
  • 2】本業に徹すること。
  • 3】本業を拡張して隣接異業種や隣接市場などに事業領域を拡大もしくは移行すること。
  • 4】本業を脱してまったくことなる事業に進出すること。しかし機能等の面での繋がりなど企業としての連続性は失わない事が重要とされる。

[文責]タカマチ産業株式会社
山嵜俊也

栃木県中小企業家同友会

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