No.134_News Topic:栃木のNEWS

News Topic 03 栃木のNEWS
~取材記事~

今いる場所で最大の挑戦をする
(株)行廣国際アカデミー 代表取締役 行廣智明氏

5月19日に行われた栃木同友会第36回総会にて行われたパネルディスカッション(コロナ禍の学び、コロナ後の生き方~明日を生き抜くためのパネルディスカッション~)では、一人の持ち時間が短く伝えきれなかった内容もあった。今回はパネラーの一人(株)行廣国際アカデミー代表取締役行廣智明氏に昨年の取り組みを時系列で振り返っていただいた。

【青天の霹靂】

行廣智明氏の写真

行廣智明氏

2020年3月コロナショックは、栃木市に海外留学生のための日本語学校と外国人技能実習生のための事業協同組合、日光市鬼怒川温泉に国内留学生のための外語観光専門学校を営む行廣氏にとってまさに青天の霹靂だった。海外からの留学生(4月入学者)及び技能実習生の入国が停止されたのである。日本語学校と海外人材紹介事業の売上げは前年対比-71%に落ち込んだ。さらに、鬼怒川温泉の観光専門学校のアルバイト先がすべてなくなり国内留学生80名のアルバイトが一時停止し、生活困窮者が続出した。待望の新入生を向かい入れることができない。しかも学費は払えない。会社の資金繰りは一気に悪化した。

【留学生の暮らしを守る】

行廣氏はすぐに自社の資金確保を行った。緊急融資、持続化給付金、家賃支援補助金等の政府系助成制度を活用した。困窮する留学生には緊急小口資金貸付(社協)の申請を行った。初めは「定住外国人は可能だが、留学生は無理」と融資を断られたが、留学生の暮らしは刻一刻苦しくなっていく、行廣氏は本部へ再三にわたり連絡をとり、最後は直談判を行って何とか留学生の当座の資金を確保することができた。(この取り組みは全国に先んじて行われ、この後、留学生に対する貸付が可能になった。)次は鬼怒川温泉の学生のアルバイト先の確保である。鬼怒川温泉の旅館はどこも厳しかったので、鶴翼の陣形のごとく、鬼怒川温泉~栗橋駅までの東武沿線における人脈ルートを広げて、コロナ禍で売上を伸ばしていた食品工場などに振り分け、学生全員のアルバイト先を確保した。「生徒たちの暮らしを守る」という氏の思いと、彼の思いを知り、力を貸してくれた仲間たちの協力の賜物であった。

【どんな時でも仕事はある】

怒涛の春・夏を乗り切ったが、来期の海外留学生の受け入れは見えてこない。日本語学校としての売り上げは見込めない状況だった。業界内では廃校や身売りが相次いだ。一方、日本国内の外国人労働者の生活や帰国困難者にとっても非常に厳しい状況が続いていた。同社では政府の救済措置である「雇用維持支援制度」を活用して、自社のゲストハウスの空室を無料開放し、全国各地の外国人労働者への救済事業で栃木県への招聘を図った。10月に入り、日光市内の鶏頂山にあるホウレンソウ農事業者の来春の人材不足問題に対して、「雇用維持支援制度」を活用した国内人材マッチング企画を日光市の人材派遣業者と農事業者へ提案した。「国内人材マッチング事業」は試行錯誤の繰り返しだったが実績が徐々に拡大して、約80名の新規労働者の売上を確保し、日本語学校の4月入学生の売上分を補てんした。

【七転び八起き】

2021年1月再度、海外からの留学生と労働者の入国停止により、3月卒業生の入替であった4月入学がさらに10月以降に延期になり再び売上げ減少。一方で鬼怒川温泉の観光専門学校は、三回目の緊急事態宣言により、再び観光客が激減した。しかし、教職員が一丸となって進路支援を行った結果、観光専門学校の第一回卒業生も無事に就職(留学生就職率は全国でも優良)、栃木市の日本語学校も過去最高の就職率と進学率を達成した。

【ここで仕事をつくり、ここで仲間たちと生きる】

2021年6月から事業計画どおりに、鶏頂山への収穫人材の供給が開始された。これにより会社全体としては2021年11月決算に向かい、前年度以上の収益を出す見込みである。2022年にはようやく海外からの留学生や労働者の入国が再開されると、既存の日本語学校及び事業協同組合の事業が回復して、過去最高の売上と収益になる可能性が出てきた。今いる場所から逃げずに、日光市に踏みとどまり、栃木市との事業連携を図った結果、観光業以外の農業という新たな分野を開拓し、国内における人材紹介事業にも進出することで危機の打開を図れた。

行廣氏は「栃木に骨を埋める覚悟ができたことで心の整理がついたことが、今回の危機に向かう力を与えてくれた」と語った。広島出身の行廣氏と大阪出身の奥さんだが、この栃木でさまざまな人と出会い、ここを終の棲家として墓を建てた。「ここで生きる」の一念がこの地域での仲間づくり、ひいては仕事づくりにつながる。「どんな時でも仕事はある」「どんな時でも打つ手はある」その言葉はこの地に住むすべての人へのエールとなった。

授業中の様子を撮影した写真

ソーシャルディスタンスでの授業

[文責]事務局

栃木県中小企業家同友会

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