No.132_コラム

コラム

問題が自分を教えてくれる。

からだに問題があって障がい者の認定をもらう寸前のAさんという人がいました。病院に行って検査を受けても、レントゲンをとっても悪いところはどこも有りませんでした。そんな中、藁をもつかむ思いでAさんはからだの専門家のM氏に師事しました。その数ヶ月後、からだが快方に向かい、その数年後に結婚までできたということでした。

重度の障がいがでた原因は、横向きになり腕枕をして寝る習慣でした。小さな習慣がAさんをそこまで追い詰めていったのです。

世の中で問題といわれるものの多くはほとんどが結果だったりします。Aさんの障がいは原因ではなく結果でした。ところがあらわれた結果を見て問題だから解決しなければという事がどれほど多いことか。Aさんの例は、結果にとらわれることなく、原因にアプローチすることで良くなった例です。痛みが問題だからと痛みという結果にアプローチをしても、原因はそのまま残ってしまいます。

会社の中で起きている問題も同じことで、問題の原因をみないで問題を解決しようとすると一時期解決したように見えますが、再発します。原因が社長のものの見方や会社のルールであることがよくあります。例えば、「先祖伝来のものを、伝統を守る」、「親子、兄弟、家族仲良く」、「デジタル化は素晴らしいのでデジタル化を推進する」、「新規事業をやらねばならない」などなど。

これらの活動は素晴らしい側面があります。当然、効果もあります。ところが長期的に見ると原因が解決していないために同じ様な問題がおきてしまう。

たとえば、「兄弟いつも仲良くすべきだ」というのは、美しい話であります。残念ながら多くの場合は幻想です。実際に兄弟で事業を始めたり、事業を継いだりしても仲違いをしてしまいうまくいかないことが多い。実は、兄弟間には幼い頃から「周囲に認められたい競争」が起きています。自然にお互いのキャラがかぶらないように立ち位置を形成しようとします。お互いが「自分を自分として認めてほしい」ので別なポジションを無意識に取ろうとする。だから、お互いに反発心が生まれてしまう。その事自体は自然なことなので、無理に「兄弟はいつも仲良く」と押さえて距離を近くすれば反発がうまれて仲違いがおきます。

私も弟がおり、仕事を一緒にしていました。社員とあまりうまく行っていませんでした。原因は兄であるわたしへの反発からだったのだと思います。その後、事件が起きて袂を分かちました。当時は「兄弟間では争いが起きやすい」という法則を知らなかったため、とても痛い目にあいました。兄弟が一緒に仕事をすることが仲違いの原因だということを知っていればお互いに嫌な思いをしなかった。知らないことは罪だと思いました。

Aさんは自分の体の法則をよく知りませんでした。彼が快方に向かったのもM氏が身体と心の法則をよく知っていてアドバイスを受けたからです。M氏と出会えなければ、彼は今ごろ障がい者として暮らしていたことでしょう。

同じことが自社の経営にも言えます。実務をやっているものの目からはわからないことも、第三者から見れば問題が丸見えであることが多い。社員やお客さんの反応、家族の態度、日々起きること、経営者仲間からの助言、それらがわたしたちにお知らせをしてくれます。

他の経営者の体験談をきき、経営の基礎知識をきいて経営にまつわる法則やしくみを知るとより色々なものが見えるようになります。

問題があることに気がつくのは実はたいへん喜ぶべきことで、自分・自社を知り対応するには絶好の機会です。問題を解きほぐすことで次のステージに行けます。かなめは、起きていることをどういった考え方と観方で取り扱うかでしょう。

同友会の例会や委員会活動、経営指針をつくる会etcを通して見識を広めることで、自分を、自社をより深く知ることができます。知恵や知識をつけることは真の自信につながっていきます。

「汝自身を知れ」
ギリシャ、デルポイのアポロン神殿には入口にそう刻まれているそうです。

[文責]専務理事
石綱知進

栃木県中小企業家同友会

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