『 商い話 』カテゴリーの投稿一覧

No.179_コラム

コラム

カルチベートされる

ちょっと長い引用。

「勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。(中略)学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても。その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものなのだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ! これだけだ、俺の言いたいのは。…」

太宰治の「正義と微笑」の中に出てくる言葉。若き黒田先生は、最後の授業で主人公たち生徒にこう語った。「真にカルチベートされた人間になれ!」先生は言う。

太宰は、何をいいたいのか? 同友会を使って説明してみる。

「同友会ってどうゆうかい?」と聞かれることがある。公式通りなら、「良い会社をつくろうとする経営者の会」「良い経営をしようとする経営者の会」あたりだろう。

栃木同友会にはないが、他県の同友会には同友会大学、経営者大学という、幹部社員・後継者・経営者自身が総合的な能力を身につけるための講座がある。肝は、総合的な能力。

太宰の言う、「その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているもの」を、大人になってもつかもうという学びにあたる。

学んだから何か直接的な功利が得られるわけではない。得られるものは茫洋として、掴みどころのないものだとおもう。でもそこで学んだものは、自分の中に、「一つかみの砂金」として残る。世の中を理解して困難な世界を読み解くための基礎力となる。

同友会の学びは、直接的に役に立つものもあれば、中長期的に自身を成長させるものもある。特に、自分自身の成長には、ものすごく時間がかかる。10年単位はザラ。

黒田先生が言っていることは、自分を大切に育てなさいということなのだと思う。

そういった学びをするための、一助として、今年も栃木同友会では、5月には総会、11月には経営フォーラム、また6月からは経営指針をつくる会、年間を通じては支部活動や共同求人・インターンシップ受け入れ活動、ダイバシティ委員会などの行事と講座をおこなう。

5月の総会では、基調講演として、京都大学名誉教授、地域経済学がご専門の岡田智弘先生をお呼びする。これから地方で何が起きていくのかを、長年の地方経済の研究された方の視点で語ってもらう。

11月には経営フォーラムをおこなう。都留文科大学教授の古屋和久教授をお迎えして、主体的・対話的で深い学びを進める教育の実体をお聞きする。自社の教育にも必ずや役に立つものと思う。

また、喫緊では、6月から経営指針をつくる会をおこなう。変化の時代にあらためて自社を見つめ直すのに活用してもらいたい。去年から続く、大学生とのコラボレーションによるインターンシップ受け入れ活動もますます活発に活動している。

みなさん、ことしも是非一緒に活動してみてほしい。

太宰が言っている、カルチベートは英語のcultivateのことで「耕す、育てる、磨く、高める」という意味だ。人も会社も促成栽培はできない。だからこそ、タイパ(タイムパフォーマンス)・コスパ(コストパフォーマンス)ではなく、きばらず・せかず・あきらめずで行きたい。

[文責]専務理事 石綱知進

No.178_目次

発行日:2025年 3月31日
発行者:栃木県中小企業家同友会
〒321-0968 栃木県宇都宮市中今泉2-3-13
TEL 028-612-3826 FAX 028-612-3827
E-mail:t-doyu@ninus.ocn.ne.jp
URL:https://www.tochigi.doyu.jp/
企画編集:広報委員会 印刷:有限会社 赤札堂印刷所
※左の画像をクリックするとPDF版がご覧いただけます。

No.178_News Topic:栃木のNEWS

News Topic 01 栃木のNEWS
~4月県例会(in 県南支部)をやります!~

栃木県中小企業家同友会会員の皆様

いつも会運営へのご理解・ご協力をいただき誠にありがとうございます。

朗報があります! 2025年度にはついに「県例会」が復活します。その先陣を、我が県南支部が担当させていただくこととなりました。この場を借りてよろしくお願い申し上げます。

初回らしいテーマを意識し、同友会理念を出発点とした企画を用意致しました。皆さまは同友会の三つある理念の一つ、「三つの目的」のうち二番目の「良い経営者をめざす」をご存じでしょうか?

先日3月の県南支部総会で支部会員に参加目的を尋ねたところ多くの方が「良い経営者になるために学びに来ている」と答え理念との一致が確認されました。しかしながら「具体的に何を学べば良い経営者になれるのか」はまだ明確ではありません。

そこで第一回県例会では『「良い経営者には何が必要?」~求められる知識や能力は何だろう~』をテーマに掲げ深堀りしてみます。

皆様の多様な知見を活かし、互いに意見から学び合う、同友会らしい例会を目指します。

開催地は小山市です。全県からのご参加を心よりお待ちしております!

[文]タカマチ産業株式会社 代表取締役
県南支部長 山嵜俊也

No.178_News Topic:全国のNEWS

News Topic 02 全国のNEWS
~第55回中小企業問題全国研究集会 in 愛媛~

参加して得られた学び

2025年2月6日・7日に、愛媛にて第55回 中小企業問題全国研究集会 in 愛媛(以下、「全研in 愛媛」)が開催され、1173名が参加した。

実行委員長 渡部伸哉氏((有)三和興産 代表取締役)からは、「全研in 愛媛では、『労使見解』50年の歴史の中で学び実践してきた先輩方と歴史に思いをはせ、私たち一人ひとりが『生きるとはどういうことなのか』を見つめ直し、未来のために自分自身が変わるきっかけの場にしたい」「さまざまなことが目まぐるしく変化する時代だからこそ、次なる50年を創り上げていくため、多くの学びとつながりをつくっていきましょう」と挨拶された。

1日目は全部で14の分科会が開催され、私は第6分科会に参加し、「誰もが最後まで“ごきげんな”社会をつくる~高齢化先進県だからこそ生み出された、しまねの仕事づくり~」と題した野津積氏(モルツウェル(株)代表取締役/島根同友会代表理事)の報告を伺った。

野津氏は、島根県の人口が93万人から30年で63万人に減り、2040年にはわが国の労働市場において1100万人が供給不足となり、採用コストに耐えられない会社は生き残れない、と鋭く指摘。

その上で、野津氏の社長としての時間の60%を人材採用に費やし、年間1000人の学生に「何のために経営をしているか」を伝え、15年で35名の新卒採用を行っている。

さらに、介護施設向け調理済み食材の製造・販売を行う同社では、介護施設厨房のDX化と指導員の役割を果たす社員の共育により、引き籠りであった人材にスポットワーカーとしてはたらける環境を提供しているとのことであった。

2日目の特別講演では「地域と人をつなぎ、次世代に心の豊かさを残す ~ポテンシャルが潜む地方で挑み続ける経営者(元日本代表監督)~」と題し、岡田武史氏((株)今治.夢スポーツ 代表取締役)が講演をされた。

岡田氏はこれからの未来を「どこにもデータはない現実」と表現し、エラー&ランを繰り返し、試行錯誤でつみ上げて現実をつくること、ミスをおそれず相手をおそれず、楽しんでプレーする必要性を話された。

お二人のお話から、高齢化が進み若者が減っていくこれからの社会において、われわれ中小企業経営者が意識すべきことと持つべき経営姿勢とは何かを考える機会となった。

今回の学びを、自社と栃木同友会の今後を考える際に活かしていきたい。

第55回中小企業問題全国研究集会 in 愛媛 開催の様子

[文](株)ウィステリアコンパス 代表取締役
栃木同友会代表理事 斎藤秀樹

No.178_News Topic:栃木のNEWS

News Topic 03 栃木のNEWS
~県南支部2月例会~

2025年2月19日(木)小山市の「ゆめまち」会場にて県南支部例会が開催された。今回のテーマは「服屋さんの社長たちは何をみているか」である。

同友会 専務理事でもある(株)共立 石網知進代表による独自資料による報告を頂いた。参加者は16名(*今回は県南支部メンバー以外にも多数の参加あり)。

服屋さんとは…現在国内でアパレル業界を引っ張る、売上上位3社(ユニクロ・しまむら・西松屋)の話。同じ業界に居ながら三者三様であり、その比較を掘り下げて頂いた。

「西松屋=赤ちゃん・子供服販売に特化 低価格帯路線。」、「しまむら=顧客重視・最先端流通システムの導入 国内展開。」、「ユニクロ=服・常識・世界を変える経営 グローバルなブランド展開。」話しの中で、トップの考えである「経営理念」が全く違い、「経営手法」の違いにも説明を頂いた。皆様も3社の店舗内を見て頂くと、明らかな違い・独自性を感じると思う。

氏は報告の中で、経営者とは誰かに言われて行動を起こすのではなく、自分の頭で真剣に考え「経営理念」を従業員と分かち合い邁進することの大切さを言いたかったのではないか…。自分は「何が好きで何が嫌いか」「何が得意で何が不得意か」そして何ができるか…。改めて自分を見つめ直す良い機会を頂いた。

結びに、氏は今回資料作成にあたり、chatGPT(AI)の活用は便利であり、今後使いこなしていきたいの一言が印象に残った。

県南支部2月例会 開催の様子

[文](株)リヴェール東洋 代表取締役
村澤英明

栃木県中小企業家同友会

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