『 No.192 』カテゴリーの投稿一覧

No.192_目次

  • 発行日:2026年5月31日
    発行者:栃木県中小企業家同友会
    〒321-0968 栃木県宇都宮市中今泉2-3-13
    TEL 028-612-3826 FAX 028-612-3827
    E-mail:t-doyu@ninus.ocn.ne.jp
    URL:https://www.tochigi.doyu.jp/
    企画編集:広報委員会 印刷:有限会社 赤札堂印刷所
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No.192_News Topic:栃木のNEWS

News Topic 01 栃木のNEWS
2026年度栃木県中小企業家同友会合同入社式

「初心忘るべからす」

「初心忘るべからず」という言葉があります。

これは、室町時代の能楽師・世阿弥が残した言葉です。

2026年4月3日に開催された栃木県中小企業家同友会、合同入社式・研修会は、まさにその言葉を思い出させてくれるような時間でした。

当日、新入社員として参加してくれたのは、株式会社フカサワの6名です。

そのほか、OB社員、会員企業の社員、社長、事務局を合わせて、全部で17名が参加しました。

最初に、新人社員を迎える入社式を行いました。その後、株式会社ウイステリアコンパスの齋藤社長と高嶋社員による基調講演。

テーマは、「共に育ち合う会社へ学び合いによる成長をめざす」。

特に高嶋さんの話は、ご自身の社会人としての経験を率直に語る内容で、参加者の多くが共惑していました。働くことの大変さだけでなく、人との関わりの中で成長していくことの大切さが伝わってきました。

講演後は、議会議事堂ロビーの階段での記念撮影。赤いじゅうたんが敷かれた階段には身を引き締める雰囲気があります。

映画の撮影などにも使われており、栃木県フィルムコミッションでも紹介されています。

撮影後は、県庁の最上階で昼食。

展望レストランから見る宇都宮の景色はいつも見る角度と違っており壮観です。食事は松花堂弁当。美しく並べられた食材は食欲をそそります。

午後からは全員での研修。

まず、新入社員へのエールとして、代表理事の小岩さんから、「働く目的を考える」という講義。その後、2つのグループに分かれて話し合いをおこないました。

グループには、新入社員だけでなく、OB社員や各会社の社長も参加します。テーマは次の5つ。
1.時間
2.空間
3.人間関係
4.気持ち
5.働く目的
それぞれについて活発な意見交換がされます。

「時間」については、ただ過ごすのではなく、有意義で、楽しく、やりがいのある使い方をしていきたい。
「空間」については、整理されていること、自分の仕事がしやすいこと、周りの人とコミュニケーションが取りやすいこと、ストレスの少ない場所であることが大切。
「人間関係」については、お互いに意見を言いやすいこと、尊敬し合えること、相手を大切にできることが必要だ。
「気持ち」については、前向きでいられること、落ち着いた気持ちで働けることが大切。
「働く目的」については、お客様に喜んでもらいたい、お金を稼ぎたい、自分の力を高めたい、よい人間関係をつくりたい。
など、さまざまな考えが示されました。

最後に、それぞれのグループでの内容をまとめ、発表となりました。

研修の後には、参加者一人ひとりが「自分への手紙」を書きます。

この手紙は、1年後、それぞれの手元に届くことになっています。

その手紙を読んだときに、自分がどのように成長しているのか。

また、そのときに「初心」を思い出したか。新入社員のみなさんにぜひ聞いてみたいところです。

今回の合同入社式を通して、新入社員のまっすぐな姿勢や前向きな言葉に、私たち経営者も大きな刺激を受けました。

私たちも、新入社員に負けないように、働き始めたころの「初心」を思い出し、気持ちを新たにして歩んでいきたいと思います。

[文責]石綱 知進]
株式会社共立代表取締役(専務理事)]

No.192_News Topic:栃木のNEWS

News Topic 02 栃木のNEWS
2026年度第41回定期総会

学びと実践の歩みをさらに前へ

5月26日に開催された栃木県中小企業家同友会第41回定時総会に際しては、この一年の活動の振り返りと新年度の方針等の各議案につきましてご審議のうえ、ご承認を賜り、誠にありがとうございました。

会員の皆さまからお寄せいただいたご理解とご協力に、心より御礼申し上げます。

一方で、総会は単に譲案を承認する場にとどまらず、私たちが今どのような経営環境に置かれ、何を課題とし、同友会としてどの方向へ進もうとしているのかを共有する大切な場でもあります。当日ご都合により欠席された会員の皆さまにもこの紙面を借りてお伝えしたいとおもいます。

昨年度は「経営の畑を耕し、種まき、根をはる一年~一年で終わらない経営の畑づくり、3年は企業づくりを~」をスローガンに掲げ、多彩な活動を展開してきました。

この言葉には、企業も同友会も目先の成果だけを追うのではなく、時間をかけて組織の土台を耕し、学びを根づかせ、中長期の成長につなげていこうという思いが込められています。今回の総会開催に向けても、昨年1月の基調講演依頼を皮切りに、12月の戦略会議や毎月の理事会で議論を重ね、長い時間をかけて準備が進められてきました。

例会や支部活動、委員会活動では、経営体験報告や実践交流を通じて、自社の課題を見つめ直し、学びを実践へと移す取り組みが継続して進められてきました。

とりわけ長い時間を要する経営指針の成文化や、労使見解に碁づく人材育成の実践では、着実な成果も見え始めています。経営理念や方針を言葉にし、社員と共有しながら日々の実践へ落とし込んでいくことは、変化の大きい時代において企業の軸を明確にするうえで欠かせません。実践を積み重ねている企業では、経営者自身の考えが整理されるだけでなく、社内での対話が増え、社員が自社の方向性を自分事として受け止める動きにもつながっています。総会では、こうした地道な積み重ねこそが、企業の持続的な成長と地域への貢献を支える力になることが共有されました。

人口減少に伴う人手不足や採用難、物価やエネルギー価格の上昇、デジタル化・生産性向上への対応など、中小企業を取り巻く環境は一段と厳しさを増しています。先行きが見通しにくい時代にあって、個々の企業が単独で課題を抱え込むのではなく、仲間と学び合い、知恵を持ち寄ることの重要性はますます高まっています。その一方で、前期は業務多忙などを理由に、活動に十分な時間を割けず退会に至る会員も多く見られました。総会では、こうした組織としての課題についても浮き彫りとなりました。

このような時代だからこそ、同友会の仲間とともに学び、実践し、知恵を出し合う場の価値があらためて問われていると惑じます。

総会では、同友会の原点に立ち返り、会員同士が支え合いながら未来を切り拓いていくことの大切さを伝えさせていただきました。自社の課題を持ち寄り、他社の実践から学び、自社に持ち帰って行動を変えていく−−その積み重ねが、企業の変化を生み、地域の活力にもつながっていきます。欠席された皆さまにも、ぜひ今後の例会や支部・委員会活動に足を運んでいただき、同友会の価値を感じてもらえればと思います。

新年度は、「経営の畑を耕し、種まき、根をはる一年~ 3年目の企業づくり、同友会づくり~」として、これまで積み重ねてきた学びと実践から行動変革へとつなげ、少しでも会員自身と企業の成長が実惑できるような一年となることを目指しています。経営指針の実践、人を生かす経営の追求、仲間づくりと組織づくり、地域に根ざした企業活動の推進など、それぞれの分野で学びを深めながら、時代の変化に主体的に向き合える力を相互に高めていきましょう。そのためにも総会での方針を一過性のものにせず、それぞれの活動の場でどう生かすかが、これから重要となってきます。

理事会は会員企業と地域の発展に寄与し、未来を明るく照らす一助となれるよう、努力してまいります。会員の皆様におかれましても総会でご承認いただいた方針の着実な実行に向けて、引き続きご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

[文責]小岩 圭一]
株式會社総研代表取締(代表理事)

No.192_News Topic:栃木のNEWS

News Topic 03 栃木のNEWS
2026年度基調講演

“ふざけている”のではない、“戦っている”のだ

5月26日(火)、宇都宮ライトキューブにて、銚子電気鉄道株式会社代表取締役・竹本勝紀社長をお招きし、総会基調講演を開催した。講演タイトルは「絶対に諦めない」。

しかし今回の報告は、単なる“感動的な経営談”ではなかった。私はむしろ、「なぜ銚子電鉄は生き残れているのか」を、経営という視点で考え続けながら聞いていた。

銚子電鉄は、千葉県銚子市を走る全長6.4km のローカル鉄道である。平均時速は約20km。自転車YouTuberと競争したら負けたというエピソードまである。車両は昭和30~40 年代製で、導入時点ですでに中古車両だったという。「シニアモーターカー」という自虐ネタには会場も笑いに包まれた。

しかし、実態は笑って済ませられるほど簡単ではない。

鉄道事業の売上は約1.1億円。それに対して、ぬれ煎餅をはじめとした食品事業の売上は約1.9億円。本業より副業の方が大きいのである。しかも鉄道は設備産業だ。車両検査だけでも数千万単位の質用が発生する。観光資源も決して豊富とは言えず、普通に考えれば成立が難しい経営環境だと感じた。

では、なぜ銚子電鉄は生き残れているのか。

その答えの一つが、「弱みを付加価値へ変換する力」なのだと思う。

銚子電鉄は、「まずい棒」「鯖威張るカレー」「資金ショートケーキ」「お金クレープ」など、自社の厳しい経営状況を徹底的に自虐ネタヘ変換している。電車屋なのに「自転車操業」、お金がないことを「キャッシュレス経営」と表現し、苦境そのものをブランド化してしまう。

竹本社長は終始ユーモアを交えながら話されるので、聴講者はシビアなエピソードの途中でも思わず笑ってしまう。あまりにジョークが多いため、最初は「かなりふざける人だな」と感じたほどだった。実際“ふざけている会社”だとお叱りを受けることも少なくないという。

しかし、話を聞くうちに、それが単なる悪ノリではないことに気づかされた。

竹本社長は、AIDMAモデルやランチェスター戦略、資金収支分岐点分析など、極めて合理的な経営理論を土台として語っていた。つまり銚子電鉄のユーモアとは、「笑わせたい」からやっているのではない。「生き残るため」にやっているのである。

そして、その“生き残るための合理性”は、ネット活用にも表れていた。

前社長による1.9億円もの横領事件が起きた平成19年前後、銚子電鉄はすでにホームページを持ち、オンラインショップでぬれ煎餅を販売していた。当時としては、地方の中小企業としてかなり先進的だったのではないかと思う。

だからこそ、「ぬれ煎餅買ってください。電車の修理代を稼がなければならないんです」という切実な発信を全国へ届けることができた。

結果、1万人以上から注文が殺到し、会社は危機を乗り越える。

もしネット販売や情報発信の土壌がなければ、この反響は生まれていなかったかもしれない。

現在も銚子電鉄は、SNSや話題づくりを通じて広い市場へ情報発信を続けている。地方企業が地元だけの商圏で戦うのではなく、ネットを通じて全国へ価値を届ける。

この視点も、銚子電鉄の生存戦略を支える重要な要素なのだと感じた。

武器が少ないからこそ、人の注意を引き、話題を生み、情報価値を作らなければならない。だから徹底的に知恵を絞る。資金力に乏しい企業が、アイディアと情報発信によって付加価値を作り出している姿だった。

そして、その根底には「絶対に諦めない」という文化がある。

横領事件後、銀行からも融資を断られる中、唯一日本政策金融公庫(国金)だけが経営者の自宅担保を条件に融資を認めた。その際、綿谷専務という方が即断で自宅を担保に出し、資金調達を支えたという話にも強く心を動かされた。

経営トップではないにも関わらず、不安定な会社リスクを背負う。その行動には類まれな覚悟を感じた。

さらに綿谷専務は、「浮草を売れ」「たい焼きを焼け」と、小さな商売を積み重ね続けた人物でもある。

そこには、一発逆転を狙う経営ではなく、小さな行動を絶対に止めない文化があった。

正直に言えば、私は講演を聞きながら、「自分なら途中で心が折れていた」と何度も惑じていた。設備はいずれ老朽化し、地方人口も減少していく。未来は決して楽観できない。

それでも銚子電鉄は、知恵を絞り、情報を発信し、行動を積み重ね、人を巻き込みながら生き残っている。鉄道事業と食品事業は互いに価値を高め合い、今では「お化け屋敷列車」や「イルミネーション列車」といった“体験を売る事業”や、「アイドルマスター(ゲーム)」とのコラボを実現するほどのブランドカヘ発展している。

もちろん、その裏には失敗した無数の企画もあったはずだ。それでも挑戦を止めない。そして、成功した打ち手は人々の認知をつかみ、次の一手へと進化していく。

厳しさを増す経営環境の中で、一発逆転を狙わず、知恵を絞り、できることを積み重ねる。その姿勢には、中小企業が学ぶべき危機への抗い方があった。

「絶対に諦めない」とは、単なる精神論ではない。

文化であり、戦略であり、行動そのものなのだと感じさせられる講演だった。

 

[文責]山寄 俊也]
タカマチ産業株式会社代表取締役(県南支部長)

栃木県中小企業家同友会

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