No.129_エッセイでちょっと一息

エッセイでちょっと一息

ブラックホール

ブラックホール 図

ブラックホールは強い重力で何でも吸い込んでしまい、光でさえ一度吸い込まれたら二度と出られないという。また強力な重力は時間と空間をゆがめて想像を超えた事象が起こるそうだ。

弊社にもブラックホールのような部屋がある。
元々は社長室だったのだが、あまりにも使い勝手が悪かったためにすぐに使われなくなり、その後の増改築でも手付かずのまま四十年近く物置になっている部屋だ。

そこには一定期間保存が必要な会計書類や小切手帳の耳、通帳、手帳、経営指針から古いパソコンまで、スグに処分して捨ててしまうのがはばかられる物たちが「とりあえず」そこへ運び込まれ続けていた。そして、その「とりあえず」はいつしか永遠となり、忙しさにかまけて処分されることなくブラックホールのように溜まり続けてきたのだった。

コロナのせいで最近時間が出来たので、先日、遂に意を決して整理をはじめた。

一応目を通してから捨てることにしたのだが、いや~。懐かしい思い出が出るわ出るわ。
「これは僕の入社前の父のメモ。同じような悩みがあったのだなあ」
「90年代の同友会共同求人パンフ、手探りで学校回りして色々教えられたな」
「例会で頂いた名刺、未熟な自分に教えてくれた同友会の先輩たち」
「このお客様はこんな昔からお取引いただいていた・・・」
「バブルに浮かれてたけど、経営的には今の方が良くなったな」
「アップルのDTPシステムは本当に革新的でそれまでの製版設備を過去のものにした。遅れまいと必死で勉強して取り入れたのが良かった」
「設備のこの借金は大変だったけど、変わるきっかけだったな」
「ああしておけばよかったのに」
「あんな面白い社員がいたな」
「リーマンショック・大震災は大変だったけど、社員の結束が強まり半年でのりこえられたなあ」
などなど、思い出がよみがえり、さっぱり整理が進まない。

アインシュタイン 写真

以前観たSF映画でブラックホールに吸い込まれながら時間が逆行して、過去がフラッシュバックするシーンがあったが、まるでそんな感じになってしまった。将来社史を作る時の参考資料になどと考えると全てが愛おしい。結局、悩んだ末に断腸の思いで大部分を処分した。

現在のコロナ禍もいつかは収束してこうして思い出になるときが来るのだろう。その時に後悔しないように今出来る事を精一杯努力してやる。そして出来ないことを嘆かず、出来ることで精いっぱい楽しもうと思った。

[文責]小山研一 県北支部
(有)赤札堂印刷所

栃木県中小企業家同友会

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