No.82_連載04:「アンパンマン」に学ぶ

連載04 「アンパンマン」に学ぶ(下野新聞 2015年5月27日掲載)

連載04 下野新聞

「そうだうれしいんだ 生きるよろこび たとえ胸の傷がいたんでも~」これはアニメ「アンパンマン」の主題歌「アンパンマンのマーチ」の出だしの部分である。

東日本大震災から3~4日後のある日、あるラジオ番組に「アンパンマンマーチを流してください」というリクエストがあった。放送されるやいなや避難所では、子どもたちがラジオに合わせて大合唱。それを聞いた大人たちは涙し感動した。それからラジオ局は連日この歌を流したという。

地震の後、事務所の電話が鳴らないので寂しいと感じ、ラジオをつけていた。私もこのアンパンマンのマーチを聞き、勇気づけられた。

20年前、子どもが2歳か3歳の頃、妻が「アンパンマン」の主題歌を聞くと涙が出そうだと言った。私にとって「アンパンマン」はテレビで垣間見る程度、曲は少し聞いたことがあるぐらいだった。歌詞をよく読んでみると確かに奥が深い。その後しばらくの間、携帯電話の着メロは「アンパンマンのマーチ」だった。

ところで「中小企業家同友会」では会員に「理念」「方針」「計画」の三つで構成されている「経営指針書」をつくることを奨めている。特に事業を行う上で、「理念」は経営者の社会に対する責任や社員に対する経営の基本的なあり方を表わしたもので重要と考えている。その「理念」を考える過程で、「自分は何のために経営をしているのか?」という問いにぶつかる。多くの経営者は、そんなこと考える暇なくいろいろな業務に追われてきているので、答えを出すのに少なからず苦労する。

「アンパンマンのマーチ」の最後は「みんなの夢を守るため」というフレーズで終わる。これを知った時、私にとって、先の問いの答えはこれだと思った。

「働く」ということには「生活」のためだけでなく、「かっこいい車に乗りたい」、「庭のある家に住みたい」、「子供を大学に通わせたい」、当社のある社員の夢などは「家に水族館を作りたい」といった夢も上乗せされている。よく「社長さんは社員やその家族の『生活』を支えているので大変ですね」と言われる。会社が傾いた時、「生活」の方は完ぺきとはいえないだろうが、雇用保険などでかなり守られていると思う。しかし、夢の方は修正を余儀なくされるであろう。だからこそ大変で、企業を維持させることはアンパンマンのようにみんなの夢を守っていくことだと思った。

先日、合同面接会に入社2年目の女子社員を連れて行った。学生から「あなたはなぜ入社しようと思ったのか」と聞かれ、「会社見学の時、こんな先輩方と共に働けたら楽しいだろうなと思ったから」と彼女は答えていた。それを聞いて、畑から予期せぬ「芽」が出たと思った。

「アンパンマンのマーチ」を意識するようになって20年、「みんなの夢を守る」ということは、「芽」を成長させ、すばらしい「実」がなるように、「会社」という「畑」を手入れしていくことだと考えるようになった。

栃木県中小企業家同友会

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