No.193_コラム

コラム

無関心でいることの怖さ
ー経営者がいま見なければならないもの一

経営者にとって、本当に怖いものは何か。

失敗することではない。反対されることでもない。新しい技術にすぐ慣れないことでもない。本当に怖いのは、無関心であることだ。

先日の例会で、強く心に残る話を聞いた。新しい技術が出てきたとき、人の反応は三つに分かれるという。積極的に取り入れる人、はっきりと拒否する人、そして無関心な人である。このうち、最後に大きく遅れ、時代から脱落していくのは誰か。それは拒否した人ではない。無関心だった人である。

拒否する人は、少なくともその技術を見ようとする。調べ、何が気に入らないのかを自分なりに考える。しかし無関心な人は違う。見ない、調べない、考えない。そして世の中が変わっていることにさえ気づかない。

無関心とは、知らないということである。そして知らないということは、対応できないということである。では、何を知らないことが命取りになるのか。税制を知らなければ会社の金を守れない。法律を知らなければ会社を危険にさらす。技術を知らなければ仕事の形が変わっていることに気づけない。市場を知らなければ顧客が離れていく理由もわからない。経営者にとって「知らなかった」は言い訳にならない。それでは社員も会社も未来も守れないのである。

今、世の中は表面だけが変わっているのではない。土台そのものが変わっている。商品が少し変わる、流行が少し変わる、便利な道具が少し増える。そういう程度の変化ではない。仕事の仕方が変わる。産業の形が変わる。国と国との力関係が変わる。人間の役割そのものが変わる。大きな変数の一つがAIである。

今、AIといえばOpenAI のChatGPT、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeなどが知られている。これらは主にアメリカの企業が開発している。これに対し、中国のAIも急速に力をつけている。中国ではオープンソースという形で、企業だけでなく大学生や研究者、一般の開発者までもが開発に参加できるAIが広がっている。多くの人の知恵を集めてAIを育てているのである。これから世界は、アメリカ型と中国型のAIに分かれて進んでいくかもしれない。そのとき日本はどこに立つのか。我々中小企業は、どの技術を使い、どの市場で生き残るのか。これは遠い世界の話ではなく、経営者の目の前にある問題である。

製造業の面で、日本はすでに厳しい状況にある。かつて日本はものづくりが強い国だと言われてきた。しかし今は多くの部品がユニット化され、世界中で同じような部品が手に入る時代である。その中で中国は、安く、速く、大量に作る力を持っている。同じ1,000円でも、中国ではものが作れるのに、日本では作れないという風になってしまっている。経営者であるなら現実を見て、次の手を打たなければならない。

昔は「勉強ばかりすると馬鹿になる」などと言われた時代もあった。しかし今の世の中を動かしているのは、間違いなく学び続け、考え続け、技術を使いこなしている人たちである。その人物が好きか嫌いか、良い人か悪い人かより先に、経営者がまず見なければならないのは、その技術がどんな力を持っているかである。自動車が生まれた時代に、牛車のほうが安心だと言い続けていたらどうなったか。世の中が自動車で、自分だけが牛車では競争には勝てない。AIも同じである。好きか嫌いかの前に、まず知ること。使うか使わないかの前に、まず理解すること。理解しなければ、判断すらできない。

ィンターネット検索によって、調べる時間は大きく短くなった。そして今、AIによって、その時間はさらに短くなっている。調べる、まとめる、比べる、文章にする、考えを整理する。こうした時間短縮の延長線上にAIがある。つまり今の時代は、時間の使い方をめぐる競争なのである。同じ一日でも、AIを使う人と使わない人では進む距離が変わる。この差は、やがて会社の差になり、利益の差になり、生き残る会社と取り残される会社の差になる。

では、これから人間の仕事は何になるのか。経営者の仕事は、決めることである。AIは情報を集め、文章を作り、案を出し、比較もする。しかし最後に決めるのは人間であり、最後に責任を持つのは経営者である。どの道を選ぶのか、誰に任せるのか、どこに金を使い、何をやめ、何を守り、会社をどこへ向かわせるのか。これを決めるのが経営者の仕事である。AIがそう言ったから、世の中がそうだから、誰かに勧められたから—それでは経営者の責任を果たしたことにはならない。情報を菓め、技術を知り、人の意見を聞き、そして最後は自分で決める。それが経営者である。

無関心でいることは楽である。知らないふりをすることもできる。しかし、それでは会社も社員も未来も守れない。無関心は、静かな衰退の始まりである。

だからこそ我々経営者は、まず知ることから始めなければならない。経営者こそ、最初に関心を持ち、最初に学び、最後に責任を持って決める。それが、これからの時代に会社を残すための、最低限の覚悟である。

[文責]石綱 知進
栃木県中小企業家同友会 専務理事

栃木県中小企業家同友会

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