No.190_コラム

コラム
今月の書籍紹介

産業のつながりを考える本

『0からトースターを作ってみた結果』という本を知っていますか?
ちょっと変わったタイトルの本です。この本は、「パンを焼くトースターを自分一人で作ってみる」という挑戦を記録した本です。
さて、「トースターを作る」と聞いて、あなたはどう考えますか?
「部品を買い集めて組み立てる」「自分で設計図を書く」―そう思う人が多いと思います。でも、この本の作者はもっと手前から挑戦を始めました。「材料そのものから自分で用意してみよう」と考えたのです

そこで著者がやろうとしたことは…

鉄鉱石を自分で探す、銅を自分で手に入れる、雲母やプラスチックの原料を集める、それらを自分で加工する、部品の形に仕上げる、最後に組み立てるという、すべての工程を自分の手でやってみることでした。

その結果わかったことは?

現代の製品は、一人の人間の手ではほぼ作れない
ということです。
これは、今の私たちの暮らしにも当てはまります。
私たちの日常生活は、目には見えないたくさんのつながりで成り立っています。そのつながりのどこかーか所が壊れるだけで、思わぬところまで影響が広がってしまいます。

たとえば、海の重要な航路(海峡)が通れなくなったとします。「石油やLNG (液化天然ガス)が届かなくなる」だけではなく、次のようなことが連鎖的に起こります。

ガソリンの値段が急に上がる、ガソリンそのものが手に入らなくなる、都市ガスが使えなくなる、発電できる量が減り、地域ごとに順番で停電が起きる(輪番停電)、LNG は肥料の原料にもなるため、肥料が不足して食料が作れなくなる(野菜だけでなく、お米なども)、重油が使えなければ漁船が動かず、魚が獲れなくなる、物流(トラックや船での運搬)が止まれば、スーパーの棚から食べ物が消える、電気が止まれば、水道まで止まる。
しかも、これが東日本大震災のように回復するわけではありません。代替えを探すことができません。下手をすれば数年間にわたって続くかもしれないのです。

この本を読むと、見えてくることがあります。

私たちの足元にある「当たり前の暮らし」は、実は信じられないほど複雑で、精密なしくみの上に成り立っています。
「平和」という言葉を、あなたはどう惑じますか?普段は「きれいごと」のように聞こえるかもしれません。でも、この本を読んだ後では、平和がなければ自分たちの生活がどれほど簡単に崩れてしまうか、リアルに感じられると思います。また、「なぜ多様性(いろいろな国・人・考え方とつながること)が大切なのか」についても、改めて考えてみてください。

この本は、世の中のしくみの複雑さと、そのしくみがいかに精巧にできているかを教えてくれます。

[文責]石綱 知進]
専務理事 (株)共立 代表取締役

栃木県中小企業家同友会

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