No.191_コラム

コラム

AI時代の税務調査〜経営者が甘く見ると痛い目にあう話〜

「うちは今まで問題がなかった。真面目にやっているから大丈夫」

そう思っている経営者ほど、これから起きる税務調査の変化を理解しておかないと、大変なことになるかもしれません。

国税庁は現在、基幹システム「KSK(国税総合管理システム)」というAIシステムを運用しています。2026年9月には次世代システム「KSK2」へ全面移行するそうです。税務調査においてもAIの活用が試験的に進められており、これは単なるシステム更新ではありません。税務調査の“目”が一段階進化するということを意味します。

これまで税務調査は、経験豊富な調査官の勘や実績データをもとに対象が選ばれてきました。いまは、申告データ、金融情報、業種、地域、売上規模などを横断的に分析し、異常値を抽出する仕組みが整ってきています。KSK2では税目をまたいだ情報統合が進み、法人と個人の関連もより立体的に把握されるようになります。

ここで経営者が勘違いしてはいけないのは、「大きな脱税だけが狙われるわけではない」ということです。むしろ危ないのは、日常の小さなほころびです。
・インボイス登録の確認漏れ
・社内飲食費の誤処理
・交際質と会議費の誤解
・不自然な領収書
・仮払金の長期未精算
AIは“金額の大きさ”だけを見ているわけではありません。“不自然な動き”を見ます。積み重なった違和惑は、いずれ抽出されます。

実地調査では、領収書の印影や発行番号、紙の状態まで確認されます。説明できない支出は、数字上は小さくても信頼を失います。

そして、もし申告誤りが見つかった場合、本来1,000万円払っていれば済んだはずの税金が、延滞税や加算税により1,200万円から1,500万円に膨らむことがあります。税務署から悪質と判断され、重加算税が課されれば更に金額が増えます。これを「不運」ととらえてそのままにしていると、またおなじ目に合います。「考え方が甘かったコスト」をいつまでも払わされることになります。

税務行政のAI化、DX化は、行政の効率化です。それと同時に経営者にとっては経営の“透明性”が問われる状況になってきたということでもあります。

もう「数字は苦手」「経理責任者が適正に処理してくれている」「税理士に任せているから大丈夫」とは言えません。税理士は経営の盾にはなりますが、経営者の無知・無関心までは守ってくはくれません。

AI時代の税務は、“ごまかしを暴いてくる”ことに加えて、“しくみの甘さを見抜いてくる”ため、それに対抗するための整備としくみ化が大切になってきます。これから生き残る会社は、売上が大きい会社ではありません。

粗利を最大化できる会社です。そのためには、外部に説明できるようなしくみをもっているほうが経営には有利です。

経営者の姿勢が、これまで以上に数字に表れる時代が始まっています。

[文責]石綱 知進]
栃木県中小企業家同友会 専務理事

栃木県中小企業家同友会

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